マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」その11

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」その11

213:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/26(木) 22:47:17.23 ID:siIgkahAO

1

グラハム「さぁ、続きだ!」

アレハンドロ『…………』

しかしアレハンドロには、腑に落ちぬことがあった

ユニオンフラッグカスタムⅡ、GNフラッグは基本性能こそ疑似太陽炉とバイオシートによる強化がなされているが、その装甲と強度まではオーバーフラッグ準拠のはずだ

事実ユニオンフラッグや前身のユニオンリアルドは、最悪ガンダムに蹴られるだけで墜落する

……そうでもしなくては飛べないからだ

アレハンドロ(何故だ、何故あれだけの攻撃を受けてまだあれほどまでに動ける?)

アレハンドロ(装甲は損壊しているにも関わらず動きが変わらない……ダメージが内部に通っていないのか)

アレハンドロ『ッ……まさか……!』

モニター照準を装甲に合わせ、拡大する

度重なる攻撃に割れたEカーボン。その隙間には光り輝く粒子の流れが微かに見える

アレハンドロ『GN複合装甲、だと!?』

グラハム「GN……何だと?」

アレハンドロ『はっ?』



マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」その1
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217:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/26(木) 22:54:03.60 ID:siIgkahAO

つい洩れてしまうアレハンドロの台詞、しかしグラハムは首を傾げ反応も乏しい

グラハムの今までの戦い方は、GN複合装甲による強度があればこその動きであり、それが無ければ初撃で墜ちていてもおかしくない

本能的に機能を理解していたのか、はたまたただの偶然か……

どちらにしても、一応納得のつく理由は見つけられたと言えよう


アレハンドロ(とにかく……バイオシートの共鳴による機動力の向上が、この粒子制御による粒子の膜がもたらした副次効果に過ぎんとすれば……)

アレハンドロ(ただの打撃に過ぎぬ奴へのダメージ、それが影響しない理由にも説明がつく!)

アレハンドロ『だが……だが分からん。だとしても、だとしてもだ!』

グラハム「……」

アレハンドロ『貴様にそれほどの力がある筈がない! ニュータイプとしての力はマリーダ・クルスにすら劣る貴様が……!』

グラハム「やはり貴様は軍人ではなくなったようだな、アレハンドロ」

アレハンドロ『…………………ッ!』

グラハム「分からんだろう。自分の事しか省みず、散っていく命の重さも分からぬ貴様には」

グラハム「他者の為に自らの命を盾とする……兵士という存在の事などッ!」

アレハンドロ『……まさか貴様……!?』

グラハム「今日は死ぬには良い日だな、アレハンドロ」

グラハム「……往くぞ」


219:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/26(木) 23:06:54.04 ID:siIgkahAO

機体が前のめりに傾き、GNフラッグは最大出力でアルヴァアロンに突撃する

装甲の内側、本来存在し得ない膜……後の研究で、バイオフィールドと呼ばれる存在……それを纏ったフラッグは、迷うことなく懐に飛び込んでいく

アレハンドロ『ッ!?』

グラハム「シィッ!」

刃と刃がぶつかり合い、粒子の光が暗闇の宇宙に小さな光点を生み出す

それでも止まらず頭がぶつかり、互いの装甲が欠けても尚グラハムは前進し、アルヴァアロンを勢いで制していく

アレハンドロ『玉砕覚悟……!』

アレハンドロ『私を道連れに、死ぬつもりかライセンサー!?』

グラハム「……ッ!」

グラハムは答えない。答える余裕も無い

アレハンドロ『だが、それでも!』

アレハンドロ『貴様の力では私は倒せないッ! 分かっているのかッ!?』

グラハム「……そんな道理……ッ」

グラハム「私の無理でこじ開ける!!」

圧し切られたアルヴァアロンが体勢を大きく崩し、突き抜けたロングソードが青色の装甲に紅い線を刻み込む

アレハンドロ『う……!』

アレハンドロ『うああああああ!!』

グラハム「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

そして、振り抜かれるGNロングソードの一閃

ビームサーベルが勢いで弾け飛び、切っ先がアルヴァアロンのカメラアイに触れ破片が飛び散る

とっさに身を退いた為カメラアイは無事だが、カバーを失いガンダムタイプの眼が露出し異様な光が線を描く

グラハム「はっ……はぁっ……!」

背後のアステロイドに叩きつけられ、激しい振動に揺さぶられるアルヴァアロン

ダメージは恐らく、皆無

煮えたぎる身体に呻き、グラハムの表情が苦痛に歪む

グラハム「まだだ……まだ……!」


220:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/26(木) 23:21:13.28 ID:siIgkahAO

グラハム「まだ……!!」

―ヴァージニア艦―

ビリー「マリーダ、準備は良いね?」

マリーダ「はいカタギリ顧問、いつでもどうぞ」

グラハムが死闘を繰り広げている頃、ビリー・カタギリはMSドッグの中で幾多ものコードと対峙していた

マネキン「どうかね、カタギリ顧問」

ビリー「やれるだけはやってみました。これで太陽炉とバイオシートを直結出来たはずです」

ビリー「理論上はこれでサイコミュの機能を最大限発動出来、マリーダの脳波を増幅出来る筈です」

マネキン「そうか……」

通路に設置されたコクピットシートには、アルヴァトーレにより潰されたGN-Xの太陽炉とコードにより繋げられていた

そこにはマリーダが鎮座し、頭部に特殊な機器を繋げている

ビリー「あとは、増幅された脳波がちゃんとグラハムのフラッグにあるバイオシートまで届くかどうかですけれど……」

マネキン「実験したわけではないのだろう? 可能性は?」

ビリー「……全くの未知数と意わざるを得ないですね」

マネキン「……っ」


221:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/26(木) 23:55:00.04 ID:siIgkahAO

マリーダ「カタギリ顧問……」

ビリー「信じてやってみるしかないさ、とはいえ、以前グラハムが話してくれた【夢】の話を元に構築した推論なんだけどね」

ビリー「向こうについたら、景気づけに一発尻でも叩いてやれ。頼んだよマリーダ」

マリーダ「……はい!」

ビリー「よしっ! オットー、火を入れてくれ!」

ビリー「バイオシートを最大出力で起動させる! 一か八かだ、頼むぞぉ!」

マリーダ(マスター……)

マリーダ「……」キッ

アレハンドロ『……成る程な』

グラハム「……」

ゆっくりと起き上がり、体勢を立て直すアルヴァアロン

そのプレッシャーには、先ほどまであった波は無く、嵐の前の静けさのような静寂が辺りを包み込む

グラハム「ッ……」

アレハンドロ『感謝するよグラハム・エーカー。私は今、自らの慢心を自覚するに至った』


アレハンドロ『もう手は抜くまい。全身全霊、全力を以て君を葬り去ってくれよう』

もう一本のビームサーベルが抜き放たれた瞬間、プレッシャーはグラハムを押し潰さんばかりに広がっていく


222:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/27(金) 00:13:21.54 ID:ZKiFhlRAO

依然として、アルヴァアロンの性能はフラッグを凌駕し

依然として、アレハンドロ・コーナーの強化された能力はグラハム・エーカーを超えている

グラハム「……」

アレハンドロ『ほう、気勢は衰えぬか。そうでなくてはな』

それでも、グラハムには明確な勝算があった

ただ一方的に殴られていたわけではない、ギリギリの範囲で見極めた確かな勝算が

グラハム(持ちこたえてくれ……!)

あとはそれを忠実に実行するのみ。身体など、それまで保てばいい

アレハンドロ『……』ニィ

グラハム(気付いた途端にこの感覚か……俗物め)

恐らく、敵はこちらの状況に感づいているに違いない

だとしても構わない。やることは一つなのだから

ロングソードを構え、出力を調整し加速体勢に入る

敵もビームライフルの照準を合わせているだろう、長期戦は不利になる

アレハンドロ『――死ねッ!』

グラハム『――参るッ!』


223:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/27(金) 00:39:26.86 ID:ZKiFhlRAO

圧縮された粒子の激流が鮮烈な輝きと共にGNフラッグに襲いかかる

アルヴァアロン砲、喰らえば塵も残るまい

グラハム「おおぉぉぉぉぉぉ!!」

黒い影がひらりと宙を舞い、その一撃をかわしアルヴァアロンめがけ一直線に飛翔する

アレハンドロ『甘いな、ライセンサー!』

グラハム「まだまだぁぁッ!!」

一瞬の邂逅、ぶつかり合う刃

弾かれつつその衝撃を利用し一回転して更にもう一撃

押し戻される瞬間出力を一時的に止めわざと戻されてから、即座に最大出力で突っ込み腕を突き出す

アレハンドロ『ッ……!?』

GNフラッグは片腕というハンデを思わせぬ動きを見せ、アレハンドロに【刀を振るう】ことを許さない

EXAMシステムも近接戦闘主体の戦いでは、その力を発揮しきれないでいた

アレハンドロ『えぇいっ!!』

グラハム「……!」

何とかして繰り出したビームサーベルの刺突も、出先を捉えられそれ以上先には進まない

それだけではない。体当たりもビームライフルも、全ての攻撃が命中することなく空振り始めたのだ

アレハンドロ『貴様ッ……何をした!』

グラハム「……」

つい先刻、あれだけ叩き込めた攻撃が一撃たりとも当たらない

先ほどの一撃でアルヴァアロンの頭部にダメージを負ったか?

それとも機器が故障し不備が発生したか?

アレハンドロ(違う……ッ)

アレハンドロ(この感覚、先ほどと何ら変わらない。アルヴァアロンに異常は見られない!)

アレハンドロ(だとするならば、私の攻撃が当たらないのは……!)


224:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/27(金) 01:40:58.11 ID:ZKiFhlRAO

グラハム「読めるのだよ、アレハンドロ」

アレハンドロ『何……!?』

ビームサーベルとロングソードの交錯に、激しいスパークが散っていく

アルヴァアロンの挙動より僅かに速く、GNフラッグは動き確実に対応してみせた

如何にMSの性能が高かろうと、如何にパイロットの身体能力が高かろうと、ニュータイプだろうと

命を賭け、身を以て学び取り、培った経験、技量だけは決して変わらない

グラハムが唯一アレハンドロに勝てるとすればその一点、グラハムもまたそこに賭けていた

グラハム「スレーチャー少佐から学び、エイフマン教授に導かれ」

グラハム「そして盟友カタギリが、部下達が支えてくれた今までの道のり……!」

グラハム「貴様ごときにッ! 否定されてたまるかぁぁぁぁぁッ!!」

アレハンドロ『ぐぉっ!?』

突き出されたビームサーベルを敢えて受けず、胴体に掠らせながらロングソードを繰り出す

アルヴァアロンは右手を上げ、腕ごとロングソードの軌道を変えることで難を逃れた

グラハム「ッ!!」

だが、その瞬間振り上げたフラッグの右足がアルヴァアロンの左手、ビームライフルを握る指めがけ叩き込まれる

フラッグの右足は衝撃で足首からへし折れるものの、四本の指が根元から引きちぎれ、ビームライフルを手放してしまう


230:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 00:01:39.16 ID:vqZMeF7AO

グラハム(これでようやく五分ッ!)

蒼のマニピュレーターが、スローモーションのように落脱していくのが見える

アルヴァアロンに対しGNフラッグが初めて与えた明確なダメージ

アレハンドロ(並ばれた……ッ!)

機体の状態は未だ五分とは言えず、アルヴァアロンが優勢だろう

グラハムも満身創痍なのは変わらず、いつ倒れてもおかしくはない状態にある

だがGNフラッグで傷つけたという事実が、この一瞬のみ両者の差を同格へと押し上げる

アレハンドロ『馬鹿なッ……貴様、不死身か!』

グラハム「その言葉はパトリック少尉に言うのだな……ッ」

グラハム(だが五分では勝てん……!)

アレハンドロ『ちぃっ!』

振り下ろされたロングソードを、ビームサーベルが受け止める

劣るパワーを出力による加速でカバーし、一気呵成にぶつけ押し返す

グラハム「このまま一気に……ッ!」

それと、ほぼ同時に事は起きた

アレハンドロ『るあぁぁぁぁぁぁ!!』

グラハム「ッ!?」

アルヴァアロンが翼を逆展開し、GNフィールドでフラッグを覆い尽くし、完全に取り囲んでしまったのだ

グラハム「っ……!」

アレハンドロ『はぁっ……はぁっ……』

アレハンドロ『如何に見えようと……読めようと……』

アレハンドロ『動けねば意味など有るまいな、ライセンサー!』


231:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2011/05/28(土) 00:04:59.95 ID:xsnOkYApo

GNフィールドで相手囲むって戦法、普通に強そうだな

どうしても電子レンジの中のダイナマイトを思い出すけど

232:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 00:16:45.15 ID:vqZMeF7AO

グラハム「……」

アレハンドロ『……ん?』

その瞬間、EXAMシステムが最大警告を発しアレハンドロへ撤退を進言する

アレハンドロ『な、何だ!?』

モニターに拡大されて映るGNフラッグ、その手の中には粒子を纏うロングソードが握られている

その刃の紅い輝きは目に見えて膨れ上がり圧縮、半透明の薄い一刃を形成する

アレハンドロ『ッッ……!』

アレハンドロの言うとおり、グラハムはニュータイプとしては他に劣る能力しかない

既に脳も限界に達し、それを示すかのように血の涙が視界を赤く染めていく

アレハンドロ『それは……ッ』

グラハム「刮目しろアレハンドロ……」

グラハム「そうとも!」

それでも、グラハムは止まらない

戦友達の死が無駄ではなかったと示すために

先に逝った友、ニールへの敬意の為に

そして何より、自分自身の生き様を貫くために

グラハム「私が……!」

グラハム「私達がッ! フラッグファイターだッ!!!」

ブツリと音が響くような、エネルギーを真っ向から断ち切るハイパーGNビームサーベル

片翼の獣の一角はアルヴァアロンの頭部を穿ち、機体すら持ち上げ吹き飛ばす

GNフィールドも解け、投げ出されるGNフラッグ

その手に握られた剣は、奇しくも以前彼が捨てたパーソナルマークの剣に似ていた


233:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 00:27:02.36 ID:vqZMeF7AO

アレハンドロ『ばっ、馬鹿な!』

グラハム「……私の」

アレハンドロ『このアレハンドロ・コーナーが……!』

グラハム「勝ちだッ!」

紅刃を引き戻した瞬間、アルヴァアロンの節々がスパーク、内部で小規模の爆発が幾つも起こる

EXAMシステムは確かに機体性能を120%にまで引き上げる力がある

ただそれは機体をオーバーロード寸前にまで追い込み続ける諸刃の刃

故にEXAMによる稼働機体は、システムの中枢たる頭部を破壊されると一線を越え破損してしまう

少なくとも、このEXAMはそうであった

グラハム「ふう……ッ」

グラハムの読み通りアルヴァアロンの動きは止まり、力無くその四肢を投げ出し無重力に浮かんでいる

勝った……その事実がグラハムの張り詰めた気を緩め、その身をシートに投げ出させた

           ・

                         ・

                         ・

アレハンドロ「……う……」

焼け焦げたコクピット。血の雫と砕けた金属が舞っている

電力の集中した頭部を破壊されたことによる逆流が機器を爆発させ、その破片に深手を負わされたアレハンドロは力無くシートに寄りかかっている

アレハンドロ「こんな馬鹿なことが……私は、世界を手にする資格を持った……!」

意識朦朧として、譫言のように後悔の念を吐き出すアレハンドロ

その哀れな敗者に、何者かが声をかけた

リボンズ『やぁ、アレハンドロ』

アレハンドロ「!?」

それは半壊したモニターに映る青年リボンズ、そして彼の肩の上に顎を乗せ無邪気に笑う少女プルツー

両者共に、端麗なその面持ちに侮蔑を浮かべアレハンドロを見下していた

プルツー『あ~ぁ、酷い有り様だ。全く見てらんない』クスクス

リボンズ『そう言ってやるなよプルツー、彼は十分に働いてくれた』

アレハンドロ「リ、リボンズ、何を……」

リボンズ『ご苦労様アレハンドロ。貴方は最後までいい道化でしたよ……』


234:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 00:31:47.52 ID:vqZMeF7AO

二人からは自身に従っていた時の態度の片鱗さえも見えない

その邪悪な笑顔を見るにつれ、アレハンドロの脳裏に一つの結論が浮かび上がる

アレハンドロ『ま、まさか貴様等……私を裏切ったというのか……!?』

リボンズ『裏切った? とんでもない。最初から貴方は我々の計画の駒に過ぎなかったのだよ』

リボンズ『ともかくこれで第一段階は終了だ。まぁ……フラッグ如きに潰されるとは思わなかったけれど』

プルツー『まさか自分がニュータイプに覚醒したなんて、本気で思ってたんじゃないだろうね?』

プルツー『あっははははは! 強化人間にされて、【自殺兵器】に載せられた事実も知らないで! やることがいちいちマヌケなんだよアレハンドロ!』

アレハンドロ『自殺……ッ!?』

リボンズ『EXAMシステムは対ニュータイプ殲滅用のシステム……』

リボンズ『すべての敵が消えた後、貴方ごと死んでくれるはずだったんだよ……君のアルヴァアロンはね』

アレハンドロ『あ……がっ……!』

プルツーの嘲笑、リボンズの蔑視。それらによって曾祖父の代から受け継がれたコーナー家の悲願、その二百年の計画が踏みにじられたことをアレハンドロは知った

アレハンドロ『貴様等……コーナー家の計画を……!』

リボンズ『そんな物言いだから、器量が小さいのさ』

アレハンドロ『リボンズウゥーーーッッ!!』


236:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/28(土) 00:47:30.24 ID:Bbhu1E890

よく考えたら初めて戦う相手攻撃にあわせてドンピシャでグラハムスペシャルできる人間が

素人の大使の動きを読めないわけが無いか

237:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県):2011/05/28(土) 00:51:19.36 ID:bbZ+cM4wo

大使殿だって元はユニオンのエースだったんだぜ!だぜ!

238:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 00:57:24.75 ID:vqZMeF7AO

           ・

                         ・

                         ・

グラハム「は……ぐ……うぁ……!」

血まみれの身体を起こす気力も無く、グラハムは沈黙したアルヴァアロンを前にシートに身を預ける

呼吸をするのも苦しい。意識的に酸素供給をせねば、このまま窒息死してしまいそうだ

グラハム「……ッ」

全身の筋肉はもはや悲鳴すら出せぬほど痛めつけられ、気を抜けば指先すら動かせなくなりそうなほど疲弊しきっている

神経も、痛感が麻痺し深刻な痺れが身体を支配しつつあった

骨も何本かは折れているだろう。確認したくもないが、パイロットスーツ越しの感触から分かるだけでも三本は肋骨がお亡くなりになっている

グラハム「ッ……」

アルヴァアロンは倒した。これでスミルノフ中佐の部下や、トリニティに消された多くの命の慰めにはなろう

だが……慰めにはなっても、失われた命は還ってこない

どうしようもないと知りながら、無力感がグラハムの心に染み渡る

グラハム「……くそっ……」

その時だった

グラハム「……ッ!?」

宇宙空間に浮かび流されているアルヴァアロンの右腕が、ゆっくりと上に伸ばされたのが見えた

――馬鹿な

終わりだと安堵したグラハムの心に、衝撃が走る

アレハンドロ『逃がさん……貴様だけは……!』

活動限界を超えたMSの起動。何処までもしぶとくつきまとうアレハンドロに、さしものグラハムも閉口する

一度解した緊張感が、四肢から力を奪ってしまった

サイコミュ能力ももう限界、これ以上の発動はままならない


240:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 01:48:04.08 ID:vqZMeF7AO

それでも頭部を失ったためか、アルヴァアロンの動きは先ほどに比べれば緩慢である

メインカメラもなく、ビームサーベルと親指しかない左腕を力任せに振るうしか攻撃手段も残されてはいない

グラハム「ッ――!」

アレハンドロ『おぉぉぉ……!』

それですらも対応出来ぬほどに、一度萎えてしまった身体は持ち直すことが出来ず

まるでチャンバラのようなデタラメなビームサーベルにも、フラッグは避けるしか術が無い

グラハム「……!」

逃げ回るだけでは、いずれ刃に捉えられるだろう

操縦桿を握り直そうと、指に力を込める

だが、パイロットスーツを伸ばすだけの精神力すら、今のグラハムには残っていない

グラハム(最後の最期で……ッ!)


241:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 01:57:32.82 ID:vqZMeF7AO

死を覚悟したその瞬間、何故か身体が軽くなったような気がした

グラハム「……!」

それは、死の間際に錯覚した都合の良い感覚か

動かぬ腕を誰かの手がそっと支え、握れぬ手の上から重ねるように細い指が絡む

血まみれの眼がそっと拭われ、淡い光に包まれた彼女の顔が、網膜に飛び込んでくる

傷ついた身体を労るように、温もりが伝わり痛みを消していく

『マスター』

グラハム「マリーダ……?」

幻聴か?

いや、幻聴ではない。確かに聞こえた、彼女の声

自身の身体の中に、彼女の命が入り込んでくるような、そんな満たされた感覚がグラハムの全身を包み込む

これならば、戦える!


242:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 02:06:38.39 ID:vqZMeF7AO

突然サイコミュが起動し、GNフラッグが息を吹き返す

重たかったペダルが、羽根のように軽くなっていき

操縦桿もまるで手の延長であるかのように、グラハムの手に吸い付きも違和感なく追随してくれる

盟友カタギリが仕上げてくれたような完璧な状態、コクピットに座るグラハムにとって、まるで時が戻ったような不思議な感覚をもたらしていく

グラハム「これならば……いける!」

怒り狂った金色の怪物がこちらを目指し、急接近してくるのが見えた

雄叫びを上げ、ビームサーベルを突き出し向かってくる

アレハンドロ『ぎぃっ……!!』

グラハム「はぁっ!!」

伸ばされた右腕は、フラッグに触れる前に二の腕から断ち切られ宙に舞う

がら空きの胴体の中心、グラハムは迷うことなくロングソードを突き出した

アレハンドロ『コーナー家の……悲願を……!』

グラハム「言っただろう……アレハンドロ」

グラハム「勝利の女神は、私の腕の中だとな」


243:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 02:12:59.78 ID:vqZMeF7AO

トドメの一撃がアルヴァアロンを穿ち抜く

その四肢は今度こそ完全に機能停止しダラリと垂れ下がり、野望に縛られた一人の権力者の死をグラハムに伝える

グラハム「……ふんっ!」

ロングソードを抜きつつ、その胴体を蹴りつけ遠くへと追いやっていく

しばらく離れてから眩い閃光が辺りを照らし、金色の機体は粒子の煌めきと共に爆発

宇宙の闇に飲み込まれるかのように、余韻を残しながら消え去っていった

グラハム「……ふう……」

終わった――

大きく息を吸い込み、肺に残る嫌な気を呼気に乗せ吐き出していく

ともあれ、最大の脅威は退けた

グラハムの興味は隣に立つマリーダへと向けられた

グラハム「マリーダ・クルス中尉」

マリーダ『はっ!』

グラハム「……本当にマリーダだ……」

マリーダ『正真正銘、マリーダ・クルスであります。マスター』

グラハム「……ひどく懐かしく感じるな、お前にマスターと呼ばれるのも」

マリーダ『出番がありませんでしたから』

グラハム「?」

マリーダ『いえ……此方の話です』


244:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 02:21:41.26 ID:vqZMeF7AO

グラハム「しかし驚かされた……マリーダ、お前は一体どうやって此処に来た」

グラハム「ッ、まさか……」

マリーダ『いえ、死んではおりません』

マリーダ『説明は長くなりますので、それは後ほどカタギリ顧問にお聞きください』

マリーダ『ともかくまずはご帰還を……その様なご無理をなさっては、後々に響きます……』

グラハム「……そんな顔をするな。我々は勝ったのだぞ」

グラハム「それに痛みは引いている。大事には……」

グラハム「……?」

グラハム「そう言えば何故、痛みが引いている? そんな機能はバイオシートには……」

マリーダ『……それは、バイオシートの共鳴で一時的ながらマスターの感覚を私に移しているからです』

グラハム「何だと……!?」

マリーダ『ご心配なく。苦痛には……馴れていますから』

グラハム「ぬ……」

マリーダ『以前お話いたしました通り、マスターに分けていただいただけのことです』

マリーダ『今の私は……空虚な人形ではない。貴方の隣に立つ、フラッグファイターです』

グラハム「……」

グラハム「……うむ」

グラハム「ありがとう。感謝してもしきれん」

マリーダ『お役に立てたなら幸いです』ニコッ

グラハム「……」フッ


245:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 02:32:24.72 ID:vqZMeF7AO

――ありがとう、お兄ちゃん

グラハム「!」

ふと、コクピットの中を何かが通り過ぎていく

マリーダ『!』

それはマリーダの心も感じたのか、GNフラッグが何かに共鳴するように脳波を響き渡らせた

グラハム「――」

眼を閉じて、彼女のことを思い浮かべる

可憐な少女が、花咲く笑顔を振りまき、星の海へと旅立っていくのが見えたような気がした

グラハム「……」

マリーダ『マスター……』

グラハム「見えたかマリーダ? お前の姉の心は、無事に還っていったよ」

マリーダ『……ッ!』

グラハム「泣くな、笑って送ってやるのが彼女への礼儀だろう」

マリーダ『はい――!』

グラハム「……」

グラハム「さらばだ、エルピー・プル」

グラハムが自然に取った姿勢は、敬礼

軍人として、一人の人間として、エルピー・プルという存在に敬意を表したが故の敬礼

彼なりの、最大限の感謝の印であった

グラハム「……」

グラハム「――来た!」


247:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 02:44:50.23 ID:vqZMeF7AO

操縦桿を強く、強く握り直すグラハム

マリーダとの再会、エルピー・プルの解放に緩んだ顔は何処へやら。その表情は戦場に生きる兵士のものへと変わっていた

グラハム「マリーダ、済まない」

グラハム「もう少しだけ私の背を支えていて欲しい」

マリーダ『マスター……?』

グラハム「最後の仕上げが残っている」

グラハム「手伝ってくれ、フラッグファイター」

マリーダ『……』

マリーダ『了解、マスター』

グラハム「マスターは止せ」フッ

天を仰ぐグラハム。その眼差しの向こうには、紅い軌跡を残しながら急速接近する、MSの機影

それは一年間追い続け、恋い焦がれた存在

乙女座の運命が結びつけた、グラハムの宿命の敵である

グラハム「これだけ苦戦してから言うのは気も退けるが……やはり言わせてもらいたい」

グラハム「我々の戦いが、何処からともなく現れた外野との一戦で終わって良いはずがない!」

グラハム「やはり最後の〆は、私と、君とで終わらせるべきなのだッ!」

グラハム「……そうだろう!」

グラハム「ガンダムッ!!!」

その表情は、まさに想い人を待つ少年の顔

まさに今、決着の場にガンダムが降り立とうとしている

刹那「刹那・F・セイエイ……ガンダムエクシア!」

刹那「ユニオンフラッグとアルヴァアロンの戦闘行為を紛争と断定!」

刹那「武力介入に移行するッ!」

グラハムは戸惑った。使命感や信念とは全く違う、高揚感を伴った喜の感情が、背骨から全身の神経へと電流のように流れていく、その感覚に

――不謹慎極まりない

こんな時に、全ての根源を目の前にしておきながら

自身の中に、強者との戦いに震える自分自身が存在してしまっている!

ならば致し方在るまい

初めて君と剣を交えた時、初めて伝えたあの言葉! 今再び君に届けよう!

私と、マリーダと、フラッグファイターの誇りを乗せた!

このッ!GNフラッグでッ!!

グラハム「敢えて名乗らせてもらおう少年!」

グラハム「グラハム・エーカー……君の存在に心奪われた男だッ!!」


249:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 03:04:31.46 ID:vqZMeF7AO

ガンダムエクシアのGNソードとGNフラッグのGNロングソードの刃が激しくぶつかり合い、火花を散らし喰らい合う

グラハム「正直理解に苦しむよガンダムッ!」

グラハム「あのまま逃げていれば追っ手も振り切れように、わざわざ虎の子の奥義まで使って駆けつけてくれるとは!」

グラハム「だが君に其処まで求められるとは、男冥利に尽きるというもの! このグラハム・エーカー、その想いに全力で応えてみせるッ!」

刹那「ぐぅッ……!」

バイオフィールドを纏う機体は興奮するグラハムのテンションに呼応、想像以上の力を発揮しエクシアを押し上げる

だがトランザムを発動したガンダム、無論これしきではびくともしない

刹那「貴様はロックオンを通じソレスタルビーイングを知り、アレハンドロを通じ世界の闇を知った!」

刹那「そして、それでもソレスタルビーイングに敵対することを選んだ! 世界の側に付くことを選んだ!」

刹那「ならば俺は貴様と、世界と向き合わねば先に進めない!」

刹那「それが俺の、ガンダムの意志だッ!」

グラハム「ぐぉっ!?」

グラハム「圧倒されたか……初めての逢瀬を思い出すな! ガンダム!」

圧倒的な出力差に弾き飛ばされるGNフラッグ

しかし、纏うバイオフィールドそのものが慣性を制御したのか、即座に体勢を変えロングソードで斬りつける

凄まじい速度で動き回るエクシアを捉えることは至難の業、だがエクシアもまたGNソード以外ではGNフラッグのバイオフィールドを貫けない

勝負は、まだどちらにも傾いてはいないのだ

グラハム「読み切るッ!!」

刹那「させるかぁッ!!」


250:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 03:26:17.31 ID:vqZMeF7AO

グラハム「君からは、ロックオン・ストラトスに似た感覚が感じられる……以前は無かった感覚だ」

グラハム「成る程、ロックオンがソレスタルビーイングで見いだした可能性が君か、少年!」

刹那「何を言っている……!?」

グラハム「ロックオン・ストラトスは言ったッ! ソレスタルビーイングは弱き者の最後の砦だと!」

グラハム「だが果たして、剣と矛は弱者に恵みをもたらすか!?」

グラハム「武力により得た富は、必ず敗者と憎しみを生み、いずれはまた同じ輪廻の輪で争いを始めるだろう!」

グラハム「無意味なのだよガンダム、ソレスタルビーイングの理念は!」

刹那「ッ……!」

ぶつかり合う剣と剣、動のガンダムエクシアに静のGNフラッグ

圧倒されながらも先読みし対応するグラハムに、刹那は臆することなく速度を上げ強気に立ち回る

刹那「だとしても、優しさだけでは世界は変わらないッ!」

刹那「想う気持ちもやがて暴走し、アザディスタンのような宗教の争いを生み出していく!」

刹那「俺も其処から生まれた……親を殺した人でなしだ!」

グラハム「なんと……っ」

刹那「愛でも……憎しみでも戦争は起こる」

刹那「ならばそのどちらでもない! 戦争への武力介入を行うためだけの存在、ガンダムで紛争根絶を為す!」

刹那「あんな思いをするのは……もう俺達だけでいいッ!」

グラハム「ぬぁっ!?」

感情的な刹那の動きはトランザムにより無駄なく加速され、読めたとしても対応出来ぬほどの超高速に引き上げられている

グラハムは先読みの先の領域に繰り出される攻撃に、幾度となく弾かれ振り回されてしまう

グラハム「まだまだ……ッ」

――ならば二手先、三手先を読み切り、そこで反撃を叩き込む!


251:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 04:16:20.87 ID:vqZMeF7AO

グラハム「だとしても私は、ソレスタルビーイングを見過ごすわけにはいかない……!」

グラハム「ユニオンのフラッグファイターとして、私は君を否定するッ!」

刹那「貴様ァァッ!」

残像を伴う超速の剣閃が、GNフラッグの右足を両断する

グラハムの反撃は、振る前にエクシアが射程から外れ空振りさえ許されない

グラハム「ッ……!」

グラハム「私は孤児だ……親もいなければ兄弟もいない、物心ついた頃から天涯孤独のみなしごだ!」

刹那「……ッ」

グラハム「だが私は愛を知っている! 父が、恩師が、盟友が、部下が! こんな私を愛してくれたからこそ、今君と対峙することが出来る!」

更に、エクシアの左手から繰り出されたGNブレイドがフラッグの頭部を貫く

だが今度は違った。完璧なタイミングでのカウンターが、ガンダムエクシアの左腕を切り落としていたのだ

グラハム「変革してみせろ少年……それでこそ私と雌雄を決するに相応しい存在!」

グラハム「それこそが、ガンダムッ!」

刹那「ガン……ダム……?」


252:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 04:27:59.37 ID:vqZMeF7AO

その時、エクシアの圧縮粒子が底をつきトランザムが解除される

刹那「ッ!」

グラハム「はぁっ!!」

すかさず振られたロングソード、とっさに下がり距離を取ったものの、切っ先はエクシアの左顔面を捉え丸々半分をえぐり取っている

刹那「トランザムがッ……!」

グラハム「奥義は時間切れというわけか……さぁどうする少年」

刹那「……」

トランザムの活動限界に達し、粒子残量の尽きたガンダムは著しく性能が劣化する

勿論刹那は忘れてなどいない

一般的な考えであれば撤退も視野に入れるべき状況である

刹那「……ッ」キッ

だがガンダムエクシアが取った行動、それはGNソードを前に突き出すように構え、前傾姿勢を取った突撃の姿勢

一直線に突貫するという覚悟を表した、刹那らしい構えであった

グラハム「……それが答えかガンダム」

刹那「ソレスタルビーイングに後退は許されない」

刹那「いや……許されたとしても俺は下がらない」

刹那「それがソレスタルビーイングのガンダムマイスターとしての、俺の覚悟だ!」

グラハム「……それでこそ、それでこそだ」

グラハム「ガンダム……!」


253:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 04:48:39.52 ID:vqZMeF7AO

対するグラハムも、大きく左腕を引き半身に構えエクシアに対峙する

此方も残るは左片手のみとはいえ、平突きを放てる体勢。エクシアと違い損傷は激しいが、マリーダのサポートにより機動力の損失は最小限に抑えられている

勝つのはガンダムか、GNフラッグか

勝敗の行方は、未だネットに弾かれたテニスボール

どちらに落ちるのかは、誰にも分からない

刹那「……」

グラハム「……」

が、ただ確実なのは、必ずテニスボールはどちらかに落ちるという事

そして……

刹那「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

グラハム「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

それは、すぐに落ちるということ


254:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 04:52:45.46 ID:vqZMeF7AO

           ・

                         ・

                         ・

……グラハムが目覚めた時に見たものは、真っ白い天井と覗き込む二つの顔

頭に靄がかかったようで、思考が上手く働かない

呟くように、思ったがままの言葉を口走る

グラハム「……ここは地獄か。閻魔と小鬼が私を睨んでいる」

セルゲイ「起きがけに閻魔呼ばわりとは……言ってくれるなグラハム」

コーラサワー「小……鬼……?」ガクッ

グラハム「此処は……」

セルゲイ「ようやく意識もはっきりとしてきたようだな。ヴァージニアの医務室だ」

セルゲイ「君はもう三日ベッドの上だったのだぞグラハム」

コーラサワー「緊急の再生治療用のカプセルが他の重症者で埋まってたからヤバかったらしいけど、よくまぁ起きられたもんだなトップガン」

コーラサワー「ま、ガンダムセミヌードを撃破し無傷で帰還したこのAEUのエース、パトリック・コーラサワーには劣るがな」フンスッ

セルゲイ(機体は殆ど吹っ飛ばされていた筈なのに……本当に何故無傷なのだ? この男は)

グラハム「ぐっ……!」

セルゲイ「! 無理はするなグラハム、今ピーリスが医師を呼んでいる」

コーラサワー「お前全身打撲に骨折八カ所、その他諸々でヤバいんだぞ? 寝てろ寝てろ」

コーラサワー「まぁこのパトリック・コーラサワーは無傷なんだけどなっ」フンスッ

セルゲイ「……」


255:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 05:02:55.90 ID:vqZMeF7AO

グラハム「ヴァージニア艦……」

グラハム「私は、生きて帰ってこれたのか……」

セルゲイ「その点に関しては我々が保証しよう。君は間違いなく生きている」

セルゲイ「よくやった……グラハム」

グラハム「……」

グラハム「……ガンダムは……ッ」

セルゲイ「……」

コーラサワー「……」

セルゲイ「蒼いガンダムは、君のフラッグを撃破し離脱、後続艦隊の追撃も振り切った」

セルゲイ「行方を追ってはいるが、広い宇宙でMS一機が捜索対象だ……恐らくは見つかるまい」

グラハム「……」

コーラサワー「覚えて……ないのか?」

グラハム「あぁ、全くだ」

グラハム「だが納得は出来るさ。やれるだけのことはやり通した、結果として敗北したのなら受け止めよう」

グラハム「あの時の私には、勝利の女神が味方してくれていた……それでも駄目なら致し方あるまい」

コーラサワー「????」

グラハム「……中佐、ブリティッシュ作戦の結果を教えて頂けませんか」

セルゲイ「まだ絶対安静だぞグラハム」

グラハム「無論です。飛び出していくような真似は致しませんよ」

セルゲイ「どうかな……君のことだ、手足が折れていても口で操縦桿を動かしてフラッグに乗りかねん」

グラハム「ち、中佐……!」

セルゲイ「閻魔呼ばわりのお返しだ」


256:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 05:13:57.24 ID:vqZMeF7AO

――その後のことは、全てスミルノフ中佐からグラハムに伝えられた

ソレスタルビーイングは母艦轟沈、確認出来る範囲でMSは四機とも大破(内一機はパイロットごと回収)

ガンダムに搭載された太陽炉は回収ならず、他の三機の行方も不明

ブリティッシュ作戦はソレスタルビーイング壊滅により、大成功として幕を閉じたのだそうだ

セルゲイ「各国の連帯はこれを機に一層強まるだろう。噂によれば、もう地球連邦発足案が三国間でまとめられているという話さえある」

セルゲイ「これから世界は一つに統一されていくだろう。我々も忙しくなるぞ」

グラハム「……」

コーラサワー「ま、あんたはしばらくはお休みだけどなトップガン」

グラハム「…………」

コーラサワー「……トップガン、寝ちまったのか?」

セルゲイ「パトリック少尉、今は一人にしてやろう」

コーラサワー「あ、はい!」

グラハム「…………」

           ・

                         ・

                         ・


258:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 08:20:48.55 ID:vqZMeF7AO

グラハムは、次第に鮮明になりつつある自身の記憶を辿り、その瞬間へと意識を遡らせていく

加速した二機のMSは、お互い刃に貫かれ、爆散し吹き飛ばされた

グラハムの記憶にも残っている、刃を突き立てる感触と、刃を突き立てられる感触

その直後フラッグは遂に限界を迎え、完全に機能を停止したのだった

グラハム「……」

――俺は生きる。生きてこの世界の行く末を見届ける

――ソレスタルビーイングの、ガンダムマイスターとして

微かに受信できた通信から聞こえた、刹那の声

そのままガンダムエクシアが遠退いていくのが、グラハムにもはっきり感じられた

生かされたという感覚より、相討ちという感覚がグラハムの実感としてあった

グラハム「……テニスボールは落下しなかった……」

グラハム「まだ、雌雄を決する場があるということか」

天井に右手を掲げ、銃の形を作る

あの男がしていたような、狙撃のつもりで狙いを定めて、心の中で引き金を引く

グラハム「少年、次は……」


259:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 08:49:27.41 ID:vqZMeF7AO

グラハム「……私が勝つぞ、ガンダム」

いつかの再会を夢見て、彼方に消えた背中へ語りかけるように呟いた

ガンダム、停滞した世界へと楔を打ち込んだ存在

いつかまた必ず現れるだろう。グラハムが軍人であり、彼等がソレスタルビーイングである限り

西暦2308年、グラハムは、ガンダムの戦いにひとまず幕を下ろした

グラハム「……」ボフンッ

ウィンッ

『マスターッ!』

グラハム「む」


260:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 09:14:45.11 ID:vqZMeF7AO

不意に、部屋に飛び込んできた人影

それが誰であるかなど、グラハムは一番よく知っていた

マリーダ「はぁっ……はぁっ……」

グラハム「マリーダ!」

マリーダ「……っ」

グラハムが言葉を紡ぐ前に、彼女はグラハムめがけ床面を蹴り跳んでいた

ぐんと近付く艶やかな眼差し、そして……

グラハム「む……」

マリーダ「マスター……!」

―医務室―

ソーマ「……」

ダリル「隊長ォォォォォ!!」

ビリー「グラハァァァァァァム!!」

ソーマ「!ダリル・ダッジ准尉にビリー・カタギリ…………」

ビリー「技術顧問でも何でも良いよ! それより」

ソーマ「今は駄目です、面会謝絶です」

ダリル「は?」

ソーマ「とにかく、面会謝絶です」

医師「そういうことだ君達。珈琲一杯飲む頃には、中に入ることも出来よう」

医師「飲むかね?」


261:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 09:44:42.59 ID:vqZMeF7AO

―そして、三ヶ月後―

グラハム「……」

久方振りに袖を通したパイロットスーツの感覚。それを待ち望んでいたかのように全身がわななき喜びを表現する

ビリー「どうだいグラハム、久し振りのパイロットスーツは」

グラハム「しっくり来る、やはりこうでなくてはな」

ビリー「はは……和服姿も悪くなかったけど、やっぱり君はパイロットスーツが一番似合う男だね」

グラハム「ふっ、誉めすぎだカタギリ」

グラハム「……行ってくるぞ」

ビリー「あぁ、気をつけて」

自身のパーソナルマーク、片翼とユニコーンの描かれた機体に乗り込むグラハム

コクピットの感覚に、身体が自然と覚醒していくのが分かる

マリーダ『マスター、ご指示を』

グラハム「フォーメーションFで敵陣を強行突破、司令部を殲滅し戦闘の即時終結を狙う!」

グラハム「休暇明けの初任務だ。頼りにさせてもらうぞ、フラッグファイター!」

通信からは、新人の一際大きな返事が響いてくる

グラハムの隣のMSが動き出し、グラハムの前を通過する

その肩には、左翼と剣の描かれたパーソナルマーク

以前のグラハムが使っていたものを、マリーダが新しく使い始めたものだ

マリーダ「マリーダ機、先行する!」

グラハム「……」


262:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 10:12:38.86 ID:vqZMeF7AO

あれ以来、ガンダムの気配は影も形も現れず、世間からソレスタルビーイングの存在は忘れ去られようとしていた

だがグラハムは感じていた、あのガンダムのパイロットの少年の存在を

世界を見届けるといった彼の視線を

グラハム「グラハム・エーカー、出るぞ!」

機器の数値を確認し、出力を上げペダルを踏み込んでいく

シートに押し込められるような感覚、心地良い圧迫感がグラハムを大空へと誘う

――良いだろう。ならば刮目しているがいい

我々がやれることなど微々たるものかもしれない。だが、私は私なりのやり方で世界に向き合い続けてみせる

これが、私の戦いだ!

グラハム「全機……フルブラストッ!」

遠い異国の地、統一の混乱により戦火のくすぶる空の下

グラハムは、世界と対峙し続けていた

TO BE CONTINUED…


263:>>1 ◆/yjHQy.odQ:2011/05/28(土) 10:18:42.93 ID:vqZMeF7AO

投下終了だフラッグファイター

何かもうgdgdで本当に済まない。猛省する

とりあえず一期は終了、二期に飛ぶ前にその間四年間の一部をやっていこうかと思う(作品系列的にF辺りの時期)

描写しなかったがとりあえず最終決戦の流れは準拠。アレルヤは捕まりました

それでは、また


264:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2011/05/28(土) 10:25:42.23 ID:IL8mvErAO



二期にリディは出られるのだろうか…


265:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/28(土) 10:28:37.32 ID:/mKkY8JSo

乙!

我々の冒険はまだ始まったばかりだということだなフラッグファイター


267:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/28(土) 10:45:36.40 ID:hX52UDSDO

ご苦労だった、フラッグファイター

あと関係無いが最後の

>アレルヤは捕まりました



で何故か吹いてしまったぞwwww原作通りなのにwwwwww

277:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県):2011/05/28(土) 20:03:31.61 ID:KT+bKPQAo

何気にテクスさんがいたような…

295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2011/05/31(火) 23:44:35.69 ID:4h5c6jwv0

乙!

第二期待たせて貰おう、ガンダム!